研究概要 |
血圧調節および腎糸球体の増殖に関わるレニン-アンギオテンシン系(RAS)の役割を検討する目的で,高血圧自然発症ラット(SHR)およびDOCA食塩高血圧ラット(DOCA)における腎組織変化,腎糸球体からの増殖因子の発現,さらにはACE阻害薬,AT1レセプターアンタゴニストおよびCa拮抗薬による治療効果について検討した。その結果,RASの抑制が, 糸球体からの増殖因子発現の抑制を介して、高血圧性腎障害の進展防止に有用であることが示唆された。次に,血圧調節とバゾプレッシン(VP)系の関連を検討する目的で,SHRおよびDOCAを用い,V1,V2レセプターの血圧調節に関わる役割を以下の方法で検討した。まず,SHRおよびDOCAにVP,OPC-21268(選択的V1レセプターアンタゴニスト),OPC-31260(選択的V2レセプターアンタゴニスト)をそれぞれ,あるいは組み合わせて投与することにより、VP系による急性の血圧変化について検討した。SHRはWKYに比較してV1レセプター刺激状態で明らかな昇圧の過大反応が認められた。これはSHRにおいてはV1レセプターの反応性の増加,すなわちV1レセプター数及び親和性の増加を示唆し,SHRの高血圧におけるVP系の関与が考えられた。DOCAにおいては、SHRで見られたV1刺激の際の昇圧の過大反応は認められず,DOCAの血圧調節にVP系の関与はより少ないと考えられた。腎V1,V2レセプターの高血圧に伴う変化については,in vitro macro-autoradiographyの画像解析の手法を用い,SHRおよびDOCAで検討した。SHRにおいては高血圧の進展に伴って腎V1,V2レセプターともに増加し,DOCAにおいては高血圧の進展に伴い腎V1,V2レセプターとも逆に減少していた。これらの結果は,SHRにおいては腎V1レセプターを介した昇圧が血圧上昇に一部関与し、DOCAにおいては高血圧時には血中VP濃度は上昇しており,レセプターのdown-regulationを示唆し,これらの仮説は上記の急性実験の結果とも合致すると考えられた。
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