研究概要 |
心筋細胞の不可逆性の原因の一つである細胞内Ca([Ca^<2+>]_i)上昇の機序についてはNa^+/Ca^<2+>交換系が重要な役割を果たすと考えられている。しかし虚血あるいはhypoxia時にNa^+/Ca^<2+>交換系は抑制されるといわれながらこれを裏づける成績に乏しい。本研究では虚血およびhypoxia時の心筋細胞および丸ごと心臓におけるNa^+/Ca^<2+>交換系の動態とこれを調節する機構を解明することである。方法は(1)モルモットの単離心筋細胞と(2)ラット摘出心臓標本を用い、[Ca^<2+>]_i,pH_i,[Na^+]_iの指標にはFura-2,BCECF,SBFIを用いた。(1)では潅流液をO_2 100%からN_2 100%とさらに2-deoxy glucoseを加え、代謝阻害により虚血にsimmulateさせた。(2)ではHEPES bufferを用い、whole heart ischemia、またはbufferをN_2100%で飽和したhypoxia状態を作成した。Reverse modeのNa^+/Ca^<2+>交換系は細胞外液のNaをTMA^+で置換して0Naとし、[Ca^<2+>]_iの上昇を指標とした。Forward modeはcaffeineを投与し、一過性の[Ca^<2+>]_iの上昇のあとの減衰を記録した。いずれもNa^+/Ca^<2+>交換系阻害薬で抑制され、Caチャネル阻害薬では影響を受けなかった。虚血あるいはhypoxiaではReverseおよびForward両方が有意に抑制された。虚血により[Ca^<2+>]_i,[Na^+]_iは上昇し、pH_iは減少した。また再灌流により緩徐に前値に復した。Na^+/H^+交換系阻害薬のアミロライドを投与した場合、pH_iの減少は抑制され、再潅流不整脈の発生は著明に抑制された。またNaチャネルブロッカーにより虚血時の[Ca^<2+>]_iの上昇の一部が抑制された。以上より虚血あるいはhypoxiaではNa^+/Ca^<2+>交換系のfoward,reverse両方とも抑制されるが、この系の主体はCaのeffluxに働くため[Ca^<2+>]_iは増加する方向に動く。またNa^+/H^+交換系の促進で[Na^+]_iも増加し、[Ca^<2+>]_i増加を助長すると結論される。
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