研究概要 |
小児再生不良性貧血(再不貧)に対する新しい治療法として、G-CSFなどのサイトカイン療法が注目されているが、それらの効果は症例間で異なっている。従って、治療前にその反応性を予測することは非常に重要である。 骨髄中に含まれる造血幹細胞はごく少数のため、以下の方法により濃縮した。AIS社の抗CD34抗体をcoatingしたマイクロセレクターによりCD34陽性細胞を分離し、さらにCD2,7,116,19,20,36,56抗体とイムノビーズにより、lineage陽性細胞を除去した細胞分画を得、これを実験に用いた。また通常の血清添加培養に使用する牛胎児血清内にはSCF活性が存在するため、無血清培養にてコロニー形成能を検討した。GーCSF、GuーCSF、IL-3単独では、正常骨髄CD34^+細胞からはほとんどコロニー形成がみられなかったが、SCFを加えることにより明らかなコロニーの形成が認められた。一方、再不貧では正常に比し、明らかにコロニー形成能が低下していた。特に、重症例の多くは種々のサイトカインを組合わせてもコロニー形成はみられず、中等症例でもコロニー形成能は不良であった。また、コロニーサイズも明らかに小さかった。RT-PCR法により、数例の再不貧において、骨髄CD34^+細胞、コロニー構成細胞のサイトカインレセプターmRNAの発現を検討したところ、正常細胞だけでなく、本症でも発現が認められた。これらのことから、本症の造血幹細胞には量的異常だけでなく、質的異常も存在し、その杵序として、サイトカインレセプターの微少系構造異常あるいは刺激伝達系の異常などが示唆された。さらに症例を増やすことにより、サイトカイン治療前の確実な予測法の開発を行なっていきたい。
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