癌化学療法中にしばしば認められる多剤耐性癌細胞は、多剤耐性化に伴って分子量170kDのP糖蛋白を発現しこれが薬物のeffluxを促進することによって多剤耐性を示す。我々は多剤耐性細胞を免疫学的に排除することが可能であるかどうかについて検討した。Adriamycinで誘導したマウスの多剤耐性白血病細胞株P388/ADRは細胞表面にp糖蛋白を発現しており、このp糖蛋白は強い免疫原性を示してCTLを誘導した。このCTLはP糖蛋白特異であり、P糖蛋白を発現していない親株P388に細胞障害性は認めなかった。 一方、P糖蛋白発現の調節因子については殆ど分かっていないが、我々は、IL-4がP糖蛋白をdown-regulateすることを発見した。生体内では刺激に応じてTリンパ球がIL-4を分泌するが、これが生体内でP糖蛋白特異的CTLの産生にどのような影響を及ぼすかについては不明で今後の検討を必要とする。 (1)多剤耐性白血病細胞株P388/ADRをstimulatorに、BDF1マウス脾細胞をresponderとしてmixed lymphocyte and tumor cell culture(MLTC)を行うことによりCTLを得た。P糖蛋白特異的モノクローナル抗体C219はこのCTL活性をdose dependentに抑制し、得られたCTLはP糖蛋白に特異的であることが分かった。このCTLを多剤耐性白血病マウスに投与してin vivoでの効果について検討中である。 (2)P338/ADRをIL-4存在下で培養するとP糖蛋白のdown-regulationが起こる。IL-4存在下で培養すると蛍光強度(mean fluorescence channel)及びP糖蛋白陽性細胞は著明に減少した。この効果は抗IL-4モノクローナル抗体で抑制された。このDown regulationを受けたP388/ADRをstimulatorとしてMLTCを行ったがP糖蛋白特異的CTLは誘導されなかった。このことより、p糖蛋白が強力な免疫原として働くことが示された。
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