研究分担者 |
中園 伸一 鹿児島大学, 医学部・附属病院, 助手 (70237288)
沖 利貴 鹿児島大学, 医学部, 助教授 (30107867)
藤吉 利信 鹿児島大学, 医学部, 助教授 (50173480)
北原 琢磨 鹿児島大学, 医学部, 助手 (90253880)
嶽崎 俊郎 鹿児島大学, 医学部・附属病院, 助手 (50227013)
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研究概要 |
成人T細胞白血病ウイルス(HTLV-I)の母児感染に関する研究を1986年1月より行い,経母乳感染に関して以下の研究結果および結論を得た。 《結果》 (1)nested-double PCR法とPA法,EIA法,IF法による血清抗体価によるHTLV-I感染を検討した結果,PCRの陽性と同時ないし直後に抗体の陽転が確認され,HTLV-I感染は血清抗体による判定のみで可能と思われた。 (2)追跡児の検討では,HTLV-I感染率は5.6%(20/357名)であり,人工乳栄養児の感染率5.3%(15/282名)に対し母乳栄養児の6.7%(5/75名)の感染率に有意な差はなかった。しかし,7か月以上母乳を哺育した長期母乳哺育群では感染率が25.0%(3/12名)と高く,6か月までの短期母乳哺育群の3.2%(2/63名)および人工乳哺育群と有意差がみられた。さらに3か月までの母乳哺育では1.9%(1/53名)と低率であった。 (3)追跡児の同胞例(2歳以上,247名)の検討でも同様の結果であった。 《結論》 短期母乳哺育ではHTLV-I母児感染のリスクが低いことがこれまでの追跡児と同胞例を併せた調査で示唆されていたが,追跡児のみでは症例数が少なく有意な差がなく,また同胞例は聞き取り調査であるため信頼性が問われていた。本研究期間中に症例数が増え,追跡児のみで上記の結果が得られたため,6か月までの短期母乳においてHTLV-Iの母児感染率が低いことが結論された。 従って現時点では,キャリア母親が望めば短期母乳哺育,特に3か月までの母乳哺育が安全かつ適切であると考えられた。
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