研究概要 |
〔目的〕胎生期Fallot四徴症の肺動脈の形態を解明しこの先天性心疾患の診療方針決定に役立てる為に,Fallot四徴症胎児の肺動脈形態を動物モデルで研究した。 〔方法〕強力な心臓催奇形性を有するbis-diamineを妊娠10日,又は9日と10日に親ラットに投与し,妊娠満期に相当する21日に帝王切開で取り出した胎仔を全身急速凍結法で凍結し,凍結ミクロトームで胸部を切り,断面を実体顕微鏡でカラー写真に記録した。この写真より肺動脈を計測した。 〔結果〕ビスダイアミン投与後に合計600頭のラット胎仔を研究した。この中には次の各種の先天性心疾患が含まれていた(カッコ内は頭数)。典型的Fallot四徴症(73),肺動脈狭窄が高度で動脈管を欠如するFallot四徴症(208),肺動脈弁欠損を合併し動脈管を欠如するFallot四徴症(85),総動脈幹症(103),心室中隔欠損(55),先天性心疾患無し(76)であった。これら先天性心疾患の肺動脈幹と左右肺動脈の内径を計測した結果中,Fallot四徴症については次の結果がえられた。典型的Fallot四徴症の肺動脈幹と左右肺動脈の太さは正常であった。肺動脈狭窄が高度で動脈管を欠如するFallot四徴症の肺動脈幹,左右肺動脈の太さも正常であった。肺動脈弁欠損と動脈管欠如を合併するFallot四徴症の肺動脈幹と左右肺動脈の内径は正常より拡大していた。以上の結果から,肺動脈弁欠損を合併する場合を除くと,Fallot四徴症の肺動脈の太さは胎生期には正常であり,臨床的にFallot四徴症の肺動脈が低形成であるのは,生後の発達の障害によると結論される。
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