研究概要 |
乾癬病巣部皮膚片の器官培養において,無血清状態,すなわちビタミンAの存在しない状態では,24時間以内のすみやかさで,乾癬特有の不全角化状態が消失し,顆粒層が強く出現し正常角化の状態となった。ひきつづき,この状態にごく少量のビタミンA(正常血中濃度の100分の1)を添加することによって,再度不全角化へ転じた。1方、正常表皮または乾癬非病巣部表皮では,生理的血中濃度以上でなければ不全角化を呈さなかった。すなわちビタミンAの生理的血中濃度においては乾癬病単部表皮は完全に不全角化を呈さざるを得ない条件にある。ビタミンAの存在が乾癬病巣の形成に必須の因子の1つであることがここでははじめて証明された。この事実はシャーレ内における正常表皮細胞培養において,培地からビタミンAを除去すると,通常は不全角化の表皮層が,顆粒層を生じ正常角化に転ずる事実に相当する。すなわち,乾癬病巣表皮は,in vitroの細胞培養の条件と共通した状態におかれているともいえる。 血清存在下でTGF-αを添加すると正常または乾癬表皮の肥厚,増殖がわずかにおこり,ただちに表皮細胞の変性におちいってきた。これは,TGF-βで拮抗された。TGF-αのauto stimulationの原理は働かないで,逆に細胞障害の方向に進んだことは,特記すべきことである。以上のことからin vivoにおいて乾癬病巣表皮で増加しているといわれるTGF-αが,逆に表皮増殖をおさえることがはじめてわかった。したがってTGF-αは,乾癬病巣表皮において表皮肥厚に関与している反面,高濃度ではむしろ抑制的なコントロールをしているともいえる。 今後,これらの因子の組合せにより,形態変化をさらに追求し,乾癬に関する発現因子をあきらかにしていきたい。
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