研究概要 |
最終年度においても皮膚からの真皮微小血管内皮細胞の単離,長期培養は,その材料の供給上の問題から十分な成果を得られなかった。しかし,ヒトさい帯静脈からの血管内皮細胞の確保は、培養液の組成の改造もあって無菌的に長期の維持が可能となった。このため遺伝子レベルの実験にも必要な量の確保ができるようになったことは今後の研究の発展のつながるものとおもわれる。血管内皮細胞のマトリゲル上での培養にコンピューター画像解析を組み合わせての血管新生の定量化の確立はほぼ確立して、細胞外マトリックスに対するレセプターである各種インテグリンの影響について検討し、とくにVLA-2の著明な血管内皮細胞の管腔形成に対する抑制作用を認めた。今後、さらに多くの因子(エンドセリンやエピモルヒンなど)の効果を検討できるものと考える。また皮膚からの肥満細胞の分離法の確立については技術的にまず順調であった。そして免疫組織染色により皮膚肥満細胞の表面抗原の検索も進み、他臓器の肥満細胞のパターンとの比較もでき皮膚由来の肥満細胞の特殊性もある程度うかがい知れた。とくに皮膚から単離した肥満細胞に高親和性IgEレセプターの存在が確認されたことは興味深い。またアトピー性皮膚炎病変皮膚の高親和性IgEレセプチ-陽性の肥満細胞の分布や数を正常皮膚のそれと検討したところ,前者では増加傾向を認めた。最後にこの血管内皮細胞と皮膚肥満細胞との接着能の解析実験では,炎症性サイトカインであるTNF-αで刺激した血管内皮細胞に非刺激のものと比較して約15倍の肥満細胞の接着能の上昇をみた。このことからも炎症時における両細胞のネットワーク形成が示唆されたので,今後はこの接着現象を司る表面分子群を解明したい。
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