研究概要 |
アトピー性皮膚炎病変部での単核球および好酸球浸潤はその病態発生に主要な役割を担っていると考えられるが,これら白血球の血管外遊出機序についてはいまだ不明な点が多い.今回われわれは,病変皮膚を一連のモノクローナル抗体を用いて免疫組織学的に染色し,浸潤細胞の性格および各浸潤細胞数と血管内皮細胞上の細胞接着分子発現度との関連につき検討した. 正常ヒト皮膚では血管内皮細胞にintercellular adhesion molecule-1(ICAM-1)の構成的発現が見られたが,E-selectinおよびvascular cell adhesion molecule-1(VCAM-1)の発現はほとんど認められなかった.アトピー性皮膚炎患者の急性病変部ではICAM-1の発現増強とE-selectinおよびVCAM-1の発現誘導が,慢性病変ではICAM-1,E-selectinの持続的発現が認められた.急性,慢性病変ともに浸潤細胞の多くはCD3,CD4,CD45RO陽性のhelper-inducer/memory T cellであった.通常のHE染色では急性病変部での好酸球浸潤はわずかであったが,免疫染色によるmajor basic protein(MBP),eosinophil peroxidase(EPO),活性型eosinophil cationic protein(ECP)陽性好酸球の浸潤とMBPとEPOの間質への沈着を著明に認めた.しかし,慢性病変ではそれらの変化は希少であった.CD3,CD4,CD45RO陽性単核球数とMBP,EPO,活性型ECP陽性好酸球数は各接着分子発現度と有意の相関を認め,特に前者ではE-selectin,後者ではVCAM-1の発現度との相関が顕著であった.また好酸球数とmemory T細胞数との間にも正の相関が認められた.以上の結果よりmemory T細胞の血管外遊出にはE-selectinが,好酸球にはVCAM-1が,最も重要な細胞接着分子である可能性が示唆された.
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