研究概要 |
我々は類天疱瘡(BP)の発症機構におけるIgG subclassの役割を下記の点について検討した.(1)BPの抗原がIgG subclassごとに異なるかどうか.(2)BP IgG subclassが直接作用して表皮真皮解離をおこすかどうか.(3)BP IgG subclassが抗原と結合して何らかのsignalを細胞内に伝えているかどうか.(4)BP IgGが補体を活性化させたのちcell lysisがおこるかどうか.(5)BP IgG subclassが抗原と結合したのち表皮細胞が何らかの物質(例えばproteaseなど)を分泌することがおこるかどうか.このうち(1)についてはブロッキング蛍光抗体法(補体法),Immunoblot法,合成抗原を用いたELISA法で検討した.その結果,1つのエピトープに対してIgG1,IgG2およびIgG4のすべてが結合しうる可能性があるが,その産生量がかなり個人差があることが判明した(Autoimmunity1994.)(2)については細胞培養系にIgG subclassを添加し,その後luciffer yellowを負荷し,共焦点レーザー走査顕微鏡でX-Z軸方向の断面像を観察することにより検討した.その結果,BP IgG subclass添加することにより,底面より細胞がシート状に剥離する場合もあったが正常のcontrolと有意の差は認められなかった.(3)に対しては細胞内Ca^<2+>,細胞内pH,膜電位について各々fluo-3,snarf-1およびdioc-5の色素を用いてその蛍光強度を経時的に観察した.その結果,BPIgG1添加でfluo-3,snarf-1の蛍光強度が変化する場合があることがわかった.fluo-3については低Ca^<2+>培地系でも蛍光強度の変化ををおこした.dioc-5については有意な変化は認められなかった.(4)についてはBPIgG1が補体添加時にfluo-3の蛍光強度が変化した.この時点においてluciffer yellowを用いて細胞形態を観察したが,特にcell lysisをおこしている所見はなかった.(5)については病変部におけるUrokinaze receptor(UKR)の有無を抗UKR抗体を用いた蛍光抗体法で観察した.その結果は尋常性天疱瘡ではUKRが表皮細胞間に認められたが,BPでは正常皮膚と差がなかった.
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