研究概要 |
四肢に生じ,臨床的に扁平疣贅を疑せた14例について,組織学,免疫組織化学,分子生物学的検討を加えた。男女比は5:9,年令は18〜70歳,平均49歳と比較的高年令者にみられ,経過も数年以上と長い例がほとんどであった。扁平疣贅の好発部位である顔面,手背はさけて,下腿,前腕の径1cmまでの,褐色から赤褐色調の扁平丘疹からなり,扁平疣贅のほか,老人性色素斑,老人性疣贅,扁平苔癬,汗孔角化症などが疑われた。組織学的には,扁平疣贅に特徴的なヒト乳頭腫ウイルス(HPV)による細胞変性効果(CPE)を14例中6例に認め,他の8例はそれぞれ,老人性色素斑4例,老人性疣贅2例,扁平苔癬2例と診断した。CPEを認めた6例では,免疫組織化学的にHPV抗原陽性所見をみたが,他の8例は陰性であった。14例全例の凍結材料より全DNAを抽出し,制限酵素PstIにて切断後,電気泳動レニトロセルロースフィルターに転写し,HPV3型DNAをプローブとしてblot hybridizationを施行した。その結果,CPE陽性であった6例とともに,CPE,ウイルス抗原ともに陰性であった1例の計7例にHPV3型DNAの存在が証明され,最終的にこれら7例を扁平疣贅と診断した。そのウイルスDNAのPstI切断パターンは多型性を示し,複数のHPV3型の亜型が関与していることが示された。以上より,四肢に生じた扁平疣贅は,青年期に生じ顔面と手背を好発部位とする典型例に比較すると,より高令者に好発し,経過が長く,臨床的にさらには組織学的にも他疾患との鑑別が困難なことも多く,最終的に診断を確定するためには,HPV DNAの検索が必要となることが示された。さらに,その関与するHPV型については,典型例と同様にHPV3型であることが証明されたが,亜型レベルでの型の違いがみられる可能性が示され,今後の検討が必要と思われた。
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