研究概要 |
われわれは,紫外線照射が皮膚に存在する種々免疫担当細胞の機能やサイトカイン遊離に複雑に作用することを報告してきた。近年,皮膚血管内皮細胞の接着分子も免疫あるいは炎症反応に重要な役割を演ずることが知られてきた。今回われわれは,紫外線療法が有効で,発症に免疫機序が関与すると考えられる乾癖を対象として,紫外線照射(PUVA療法)前後における血管内皮細胞,炎症性細胞浸油,角化細胞の接着分子の変化を検討した。 PUVA療法前後に乾癖病巣からえた凍結生検組織をモノクロナール抗体を用いて免疫組織学的に観察した。治療前の乾癖皮膚では,血管内皮細胞にHLA-DR,ELAM-1,ICAM-1の強い発現が認められたが,PUVA療法後には正常の状態に回復した。一方,VCAM-1は,治療前後ともに微弱の発現をみるのみでPUVAの影響は認められなかった。真皮乳頭直上の乾癖表皮内に増強発現されたHLA-DRおよびLeu6も治療後に減弱した。さらに,真皮炎症反応内のLFA-1,VLA-4,CD45RO陽性細胞もPUVA療法により消失した。これらの結果から,血管内皮細胞を含めた種々免疫担当細胞への影響を介して紫外線が抗炎症作用を発揮することが示唆される。 乾癖病巣における接着分子の発現増強には,活性化Tリンパ球や表皮角化細胞からのサイトカイン遊離の関与が考えられる。そこで,現在,培養内皮細胞にTNF-αなどを作用させ,接着分子発現に及ぼす紫外線照射の影響をin vitro で検討中である。
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