研究概要 |
本研究の目的はこれまで検査者の経験に頼る部分の多かった肝実質性疾患の超音波診断を客観的かつ定量的に行おうとするものである。このため超音波画像のパターンを特徴づけるファクターとして,平均値,分散,変動係数,パワースペクトラム解析の4つを選び,画像上に設定した関心領域におけるこれらの特徴量を抽出した。また・データの入力に関しては,入力層4units,中間層4units,出力層1unitからなる3層のニューラルネットを構築し,学習にはバックプロパゲーション法を用い,修正式に慣性項を加えることで収束を高速化した。当初はフイルムに撮影された画像をレーザフイルムスキャナで読みとりデジタル化して入力を行っていたが,本研究補助金で備品購入したワークステーション(Sun IPX)と超音波装置を直接連結させることによりデータの入力ならびに出力が簡便に行えるようになった。 以上のシステムに典型的な正常および異常(肝硬変)症例のデータを教師信号として入力し,診断支援システムとしての有用性を検討した。出力値は0〜1の数値で表わされ0.1以下を正常,0.9以上を異常とすると,ニューラルネットの正解率は正常について80%,異常について89%であり医師の診断とほぼ一致した。また,異なった探触子による画像や,3種類の異なった画像処理による画像についても検討を行った結果,若干の傾向の違いはあるもののいずれの組み合わせでも基本的には同様の結果を得ることができた。 本研究により本システムは肝実質性疾患の定量評価に関し大きな有用性を持ちうるものと考えられた。ただ,小結節性で間質の幅も狭いような肝硬変症例で正常例とのオーバーラップが見られるといった問題点もあり,こうした点については今後フラクタル次元等の新しい項目を加えて検討を続ける予定である。
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