研究概要 |
(1)臨床的研究: 1週間の無投薬期間の後,6名の季節性感情障害入院患者と1名の外来患者に光療法を行った.照射は高照度光-低照度光-高照度光または低照度光-高照度光-低照度光の順に合計30日間,午前6-8時に行った.重症度は同症用のハミルトン評価尺度を用いた.照射前に患者の光療法に対する期待度およびモ-ズレイ性格検査を行った. 高照度光はハミルトン尺度得点を有意に低下させたが,低照度光は無効であった.患者の光療法への期待度には高照度光有効群と無効群間で差はみられなかった.モ-ズレイ性格検査においても両群間に差はみられなかった.これらの結果は,同症における高照度光療法の効果が非特異的なプラセボ効果に基づくものではなく,光の特異的効果に基づくことを示唆していると考えた. (2)動物実験: 感情障害における生体リズムの役割を検討するために,抗うつ作用を有する2種の薬物,リチウムとイミプラミンの臨床量をラットに慢性投与し,体温リズムと行動リズムにおよぼす効果を分析した.その結果,リチウムは周期を延長させたが,イミプラミンにはこの作用はみられなかった.また,両薬はともに位相を変化させた.これらの周期,位相に対する作用には行動,体温リズム間で相違がみられた.環境の明暗サイクルを8時間後退させこれに対する再同調をみたところ,いずれの薬物もこれに対してはなんらの作用をも示さなかった.以上から,生体リズムの障害がうつ病の病態に関与していることが示唆された.
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