研究概要 |
自閉症は、中枢神経系のなんらかの機能障害を基盤とし、乳幼児期における母-子間の相互作用の障害がその症状形成に大きく関与するものと考えられている。乳幼児の行動を直接観察することによって、自閉症の初期徴候を抽出することを目的に、次の2つの研究を行った。 1)24項目のチェック・リストによる自閉症の初期徴候の検討 24項目のチェック・リスト(小児行動評価研究会)を用いて、自閉症児188例(男 146例、女 42例、6.7±3.5歳)と正常対象児261例(男 133例、女 128例、1.8±0.8歳)の2群について検討し、Logistic回帰分析によってLevelI〜IVの4段階に整理した。診断学的にはLcvelI(項目18,14,13)が自閉症との関連が最も高いが、初期徴候との関連ではLevelIV(項目24,5,1,17,3,2)の行動が重要な意味をもつものと考えられた。 2)ビデオ記録を用いた初期徴候の研究 自閉症と気付かれる前から家庭でビデオが撮られていた8例(男児、初診時年齢:2;0〜4:6歳)について、ビデオ記録の解析を行った。 (1)両親によって気付かれた行動と年齢;両親によって発達上の異常が気付かれた年齢は、0;3〜2;0歳であり、その内容は「言葉の遅れ(1;0〜2;0歳)」が最も多く4例で、「模倣をしない(1;6歳)」、「目が合わない(0;3歳)」、「笑顔が乏しい(1;6歳)」、「抱きにくい(0;3歳)」であった。 (2)ビデオ記録の解析;3期(I期;0〜0;6歳、II期;0;7〜1;0歳、III期;1;1〜2;0歳)にわけて検討した。その結果、社会的相互交渉の障害と情緒的障害は0;6歳以前から見られ、1;1歳以後では全例に見られた。視覚的・聴覚的行動の障害は0;3歳から見られ、独特な知覚行動が見られた。筋トーヌスと運動の障害は0;7歳以後に見られ、非定型的行動は0;9歳以後に見られた。 他の発達障害児、正常児との比較検討がさらに必要であるが、早期発見の糸口が見いだされた。
|