研究概要 |
ポジトロン断層法(PET)によるヒト脳のドーパミン合成能を評価する標識薬剤として,^<18>F標識のL-dopaプロドラッグの応用を検討した.4-O-pivaloyl-L-dopa(PDOPA)をacetyl[^<18>F]hypofluoriteにより^<18>F標識化し,6-[^<18>F]fluoro-O-pivaloyl-L-dopa(FPDOPA)合成し,マウスにおける代謝動態を,広くPETにおいて臨床使用されている6-[^<18>F]fluoro-L-dopa(FDOPA)と比較検討した。FPDOPAは,FDOPAと同様に中性アミノ酸輸送により脳に取り込まれたが,その割合はやや低下した.しかし,ドーパミン合成の盛んな線条体への集積は,脳の他の部位に対する集積より高まった.また,FDOPAの線条体への集積は,末梢系の代謝阻害剤を投与することで著しく高まるが,FPDOPAに対する効果はやや小さく,プロドラッグとしての望ましい特徴が現れたものと考えられた.組織内においては,FPDOPAはまずエステラーゼによりFDOPAとなり,線条体においてのみ更に[^<18>F]fluorodopamine(FDA)と代謝されることが,HPLC分析による代謝物分析により明かになった.本結果は,FPDOPAがドーパミン合成能を評価する^<18>F標識プロドラッグとなり得ることを示した. また,FPDOPAを加水分解して,生理的食塩水によるHPLC精製による新しいFDOPA合成法は,従来報告されている方法に比べ,ルーチンの合成法としていくつかの優れた特徴を持つ.FDOPAによる臨床研究においては,脳の小構造体である線条体に対して,PETによる代謝画像とMRIによる形態画像を正確に重ね合わせ技術を確立し,半定量的解析を行った.
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