研究概要 |
1.黄色ブドウ球菌(特にMRSA)のTSST-1,enterotoxin産生性を更に詳細に検討するためPCRによるこれら毒素の遺伝子の検出系を確立させた。TSST-1遺伝子(tst),enterotoxin A〜D遺伝子について計5組のprimerを作製し至適条件を検討した。それにより臨床分離便由来MRSA74株についてPCRによるTSST-1,enterotoxin産生性を検討し従来の逆受身ラテックス凝集反応(RPLA法)で検出しにくかったenterotoxin Cの検出が増加した。当院分離の術後MRSA腸炎起炎菌24株中22株がtst,ent A,ent c型株であることがあきらかになった。これらの株は従来のRPLA法ではTSST-1,enterotoxin A産生株と判定されやすく,PCRによる黄色ブドウ球菌毒素の遺伝子の検出法によりMRSA株のより詳細な把握が可能となった。 2.次にPCRを用いて培養過程を経ることなく直接臨床分離検体からMRSAを検出する方法の検討では,外科臨床上特に問題になるTSST-1産生MRSAを検出することとした。菌液ないし臨床分離検体(喀痰,胃液)をアクロモペプチダーゼで消化後アルカリにてDNAを抽出し100培希釈したものでPCRを行った。この方法での検出感度はmec Aが約1000CFUでtstは数百CFUであった。判定までに要する時間は約6時間であった。 3.家兎にTSST-1を静注し反応を見たが、血圧低下と著明な白血球数減少を認めた。その血清中のIL-1,TNF様物質についてbioassayにて測定を試みたが測定が不能であった。 4.TSST-1のサイトカイン産生に関して、TSST-1,エンドトキシンを人血液より分離した単球(Mo),Mo+Tcell,Mo+IL-2,Mo+INFγ,単核球,Tcellの培養系に各々加え,そのTNFα産生をElisa kitにて測定したが,明かな差を証明することはできなかった。
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