研究概要 |
ヒト胆汁および腹水中β-lactamase活性を、ABPC,CERを基質とするAcidimetry法を応用してPCaseとCEPaseに分別定量する方法を、さらにHPLC法にてPCG,CER,CXMを基質としてPCase,CEPase,CXMaseに分別定量する方法を確立した。HPLC法での測定限界は0.05mU/mlと非常に高感度であった。 胆道疾患180例の胆汁243検体から検出した細菌196株について検討した結果、グラム陰性桿菌は40.8%を占め、そのうち96%にβ-lactamase産生能を認めた。また複数菌感染は46%を占め、3菌種以上の複数菌感染ではPCaseもCEPaseもいずれも有意に高かった。臨床症状のうち、白血球数が8,000/μlを越え、かつ、38℃以上の発熱を伴っている症例では、PCaseもCEPaseも有意に高値を示した。 化膿性腹膜炎42例の腹水83検体、78株における検討では、グラム陰性桿菌の84%がβ-lactamase産生菌で、複数菌感染は76%であった。β-lactamase産生菌が検出された腹水ではPCaseもCEPaseも極めて高く、これに対して、β-lactamase非産生菌のみ、あるいは無菌腹水では、腹水中β-lactamaseは検出されなかった。 胆道感染症および化膿性腹膜炎症例において、経日的に細菌検査およびβ-lactmase活性の測定を行ったところ、β-lactamase活性は、細菌の消長に呼応して変動した。 胆汁ドレナージ施行21例にCLDMを投与した検討では、β-lactamase産生が構成型CEPaseで6.7〜84.9%〃誘導型で4.8〜82.9%抑制された。 以上より、胆汁および腹水中β-lactamase活性値は抗菌剤の治療効果、適切な抗菌剤の選択に有用であることが判明した。
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