研究概要 |
同種血輸血による輸血副作用・合併症を防止するために悪性疾患の多い消化器外科患者を対象に,近年開発された遺伝子組換え型ヒトエリスロポエチン(EPO)を利用した自己血輸血を実施し,EPO投与および/あるいは自己血輸血が同種血輸血の回避に有効か否かを検討した.(1)消化器外科患者の貧血と血中EPO濃度:癌症例55例と良性疾患42例の血中EPO濃度を測定した.対照群,癌患者群ともにHb濃度(X)と血中EPO濃度(Y)は有意な相関を示した.(対照群:LogY=3.17-0.20X(r=0.91,p<0.01),癌患者群:LogY=2.41-0.09X(r=0.51,p<0.01)しかし,癌患者の貧血では,相対的に血中EPO濃度が低下していた.(2)EPO投与によるHb濃度増加量:12症例に対してEPO3000〜6000IUを術前1週間から術後2週間まで投与した.術前1週間の投与で0.8〜1.1g/dlのHb濃度増加が認められた.(3)EPO併用自己血輸血:7症例を対象に,術前8〜15日前に400ml〜600mlの自己血採血を行い,採血後EPO3000IUを術前まで(平均7.7日)連日静派内投与した.Hb濃度増加量は0.82g/dlであった.EPO併用自己血輸血は,EPO投与によるHb濃度の実質的増加と,医師側の同種血輸血に対する適正使用の意志が相俟って同種血輸血の回避・削減に有用であることが示唆された.
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