研究概要 |
1、自家骨髄移植を併用した消化器癌に対する大量化学療法の確立:抗癌剤のdose limiting factorである骨髄抑制を乗り越えるために、11例の進行胃癌患者に通常量の4-5倍の投与量であるetoposide 1,200mg/m^2,adriamycin(ADR) 80mg/m^2,cisplatin(CDDP) 120mg/m^2を投与し、自家骨髄移植を併用したところ、骨髄は全例生着し、治療を安全に施行し得た。治療成績は評価可能病変を有する9例中8例89%にpartial responseを得た。各因子別では原発巣1/1(100%)、リンパ節転移5/5(100%)、臓器転移2/2(100%)、他臓器浸潤2/2(100%)、腹膜播種2/3(67%)であった。これらの奏功率は、胃癌化学療法の報告例のなかでは、最も高いものである。しかし、生存期間は満足すべきものではなかった。これは、化学療法のみの治療の限界と思われた。 2、adhesive tumor cell culture system(ATCCS)による抗癌剤感受性試験:cell adhesive matrix plateを用いたATCCSの結果は以下のようである。(1)胃癌新鮮切除標本より癌組織を11例において採取し、8例(73%)に感受性試験を遂行し得た。2例(18%)ではlow growth、1例(9%)はcontaminationで結果を得なかった。生検標本を用いた結果では、15例に施行して、10例(67%)で感受性結果を得たが、4例でlow growth、1例でcontamination計5例(33%)で結果を得なかった。(2)low growth となった症例の組織型に特徴はなかった。(3)90%の増殖抑制を示すIC90値のpercentileが 30%以下を感受性有りとすると感受性陽性率はADR 17%,CDDP50%,5-FU 28%,mitomycin C(MMC)40%であり、CDDP,MMCの感受性がすぐれていた。(4)ATCCS結果と、5-FUの臨床効果に相関を認めた。 3、本研究の結果から、高度進行胃癌に対して、生検材料からの感受性試験を行い有効抗癌剤を選択し、術前大量化学療法によってdown stagingを図り根治手術を施行する治療が試みられるべきであると思われた。
|