研究概要 |
消化器癌のなかでも極めて予後不良である胆嚢癌ならびに胆管癌切除例の主病巣のホルマリン固定後パラフィン包埋切片を用いて,癌細胞核DNA量をflow cytometryにて測定するとともに,増殖細胞核抗原(PCNA),増殖因子受容体(EGFR),C-erbB-2,c-myc,K-ras,p53,fibronectin,laminin,tenascinをそれぞれABC法にて免疫組織化学的に染色し、これら各種分子生物学的パラメーターの臨床的意義や予後因子としての有用性について検討して,以下の研究成果を得た. 1.胆嚢癌:AneuploidやK-ras陽性例は進行例に多く,累積生存率もDiploidやK-ras陰性例に比し有意に不良であった,特にK-rasは従来の病理組織学的因子では困難であった癌深達度ss以上の進行胆嚢癌の予後判定に有用であった.またAneuploidでかつPCNA陽性例,c-mycとp53の同時陽性例,あるいはtenascin陽性でかつfibronectin陰性例は極めて生物学的悪性度が高く,いずれも切除後2年以内に死亡していた.さらにこれらの因子のうち,PCNA標識率や細胞外マトリックスは相対非治癒以上の切除後の再発時期や再発様式の判定にも有用であった. 2.胆管癌:切除後3年以上生存例は全例diploidで,またPCNA標識率は30%未満であったのに対し,3年未満癌死例ではその42.9%がaneuploidであって,EGFR陽性率やtenascin陽性率も3年以上生存例に比し有意に高率であった.さらに細胞外マトリックスと再発様式との関係をみると,laminin陽性例では陰性例に比し肝肺転移が有意に高率に認められた.
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