研究概要 |
<CyclinD1と無蛋白培養> 我々の樹立した食道癌細胞株23株を対象にCyclinD1の発現を検討した。CyclinD1の増幅は34.8%に、mRNAはほぼすべての細胞株で発現を認めた。無蛋白培養可能性との関連では、CyclinD1発現は92.3%の高率に無蛋白培養との関連性が示唆されたが、CyclinD1の増幅は46.2%に認めたのみであった。またCyclinD1の増幅を認めた75%、CyclinD1発現を認めた60%に無蛋白培養が可能であった。 <P53 mutationと無蛋白培養> 食道癌細胞株29株を対象にp53 mutationを検討した。29細胞株のうち22株(75.9%)の高率にSSCP法でshiftがみつかった。無蛋白培養可能細胞では7株中5株(71.4%)にmutationを認め、exon5に3株、exon6に1株、exon7に1株mutationを認めたがp53のmutationと無蛋白培養との関連性は認めなかった。mutationの位置は有血清のときとほぼ同一であった。有血清でmutationを認めなかった3株の無蛋白培養可能細胞では1株に新たにp53のmutationを認めた。 <各種遺伝子と培養可能性> さらに樹立された食堂癌株における遺伝子の検討をc-myc,erbB,hst-1,CyclinD1,b-FGF,p53 mutation, Cip1/Sdi1/Waf1/p21についてまとめて検討を行ったところ、まったくモザイクになっており培養に関連する特定の遺伝子を認めないことが判明した。また新鮮標本におけるRbのloss,APC locusのloss、MDM2の増幅、HPV感染についての検討では、MDM2の増幅と培養可能性に関連を認めた。 <遺伝子と予後> 82例の新鮮切除標本についての検討では、17例(26.1%)にCyclinD1の増幅を認め、この遺伝子増幅の認められた患者の予後は不良であった(P<0.05)。p53 mutation,MDM2とp53 mutationの組み合わせ、PbとCyclinD1の組み合わせ、APC locusのlossにも予後との関連を認めた。これら細胞増殖、細胞周期に関連する遺伝子と培養可能性にはMDM2以外関連を認めなかった。
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