研究概要 |
弓部大動脈瘤手術時の脳保護と胸腹部大動脈瘤手術時の脊髄保護は手術治療の鍵を握る重要な問題である。無血視野での手術を行なうためには、中枢神経系への血流を途絶した状態が理想ではあるが、中枢神経系自体の保護の観点からは、血流途絶時間に制限がある。この問題を解決するために基礎実験を行なった。家兎腹部大動脈遮断脊髄虚血モデルを用いて、虚血中に、プロスタグランディンE1/マンニトール/バルビタールを含んだ希釈冷却血液(Ht:5%,15℃)を15分毎に間欠的に灌流をしたものとこれを行なわなかったコントロール群で、再灌流後の脊髄表面の微小循環を比較した。また同様の保護液を雑種成犬脳血流遮断モデルに用いて、この再灌流後の脳組織血流状態と病理学的検討に加えて脳組織水分含量について比較検討した。 中枢神経系への血流単純遮断法に比較して、今回の検討では脊髄虚血モデル/脳虚血モデルとともに再灌流後の水分含有量を押さえることが可能であり、reactivehyperemiaも押さえられた。このことから、虚血中の脳神経障害が軽減されたものと判断された。本実験で用いた保護液灌流法は、弓部/胸腹部の大動脈瘤手術時の保護手段として、血流遮断時間の延長を可能にせしめえるのに有望と考えられた。今後高エネルギー燐酸化合物保存状態について検討し臨床応用可能かどうか検討していきたい。
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