研究概要 |
ブラウンノルウェー(BN)をドナー,ルイス(LEW)をレシピエントとするラット肺移植モデルにおいて移植後短期間のサイクロスポリン投与により移植肺は全例長期生着する。この移植肺にはクラスII抗原の限局した発現がみられ同部に気管支病変が高率に認められ,臨床肺移植後の閉塞性気管支炎などの術後気管支病変モデルになると考えられる。リンパ球混合培養(MLR)による検討では,レシピエントラットは第3者(ACI)ラット細胞に対すると同様にドナー型の細胞にも反応しうることが判明した。また,レシピエントラットの脾細胞をF(BNXLEW)ラットの足蹠に皮下注射しGVH反応を膝窩リンパ節の腫大で評価すると,対側のF_1ラット細胞注射側よりあきらかに腫大を認めた。このことはMLRでみられたin vitroにおけるドナー抗原に対する反応性がin vivoの系でも認められることを示している。以上の結果よりレシピエントラットにはドナー抗原に対する反応性を有する細胞の存在を示唆する。レシピエントにはドナー特異的なサプレッサー細胞活性は認めなかった。皮膚移植による検討ではドナー型(BN)の皮膚は正常コントロールラット(LEW)に移植した場合に比べレシピエントラットに移植した場合に明らかに生着延長を認めた。第3者(ACI)の皮膚移植では同様のことは観察されずドナー特異的な免疫抑制状態と考えられた。長期生着移植肺はドナー型の皮膚移植片が拒絶されるとほとんどが組織学的に急性拒絶の像を示した。以上の結果は,このモデルは免疫寛容状態でない事を示唆する。気管支病変の成因として,ドナー抗原に反応性のリンパ球による免疫学的機序し慢性拒絶反応)が考えられる。今後されに移植肺におけるサイトカイン遺伝子の発現や気管支病変の増悪因子,免疫抑制剤投与による効果的予防法について研究をすすめる。
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