研究概要 |
α2アゴニストが神経細胞においてそのストレス反応の結果放出するカテコラミンの分泌を抑制することはよくられている。副腎髄質のクロマフィン細胞はパラニューロンとしての性質を有し、神経機能を探る上で有用なモデルであり、同様にα2アゴニストがカテコラミン分泌を抑える。しかしそれがα2受容体を介するものか否かは議論が分かれており、さらにα2アゴニストの結合する新たなイミダゾール受容体がクロマフィン細胞で同定さその生理的役割が注目されている。これに加えて従来から神経細胞への作用としては受容体を介する特異的作用と特に受容体を介さない非特異的作用があげられておりこれを区別することも重要である。今回我々はα2選択が高く、またイミダゾール核を持つDexmedetomidineとその光学異性体でα2への作用が乏しいLevomedetomidineを用いこれら薬剤のクロマフィン細胞のカテコラミン分泌に対する影響を調べ、この作用が選択性の優れたα2ンタゴニストであるatipamezole(イミダゾール核を持つ)およびL-659,066(イミダゾール核を持たない)で拮抗されるか否かを調べた。カテコラミンの分泌刺激はアセチルコリンの投与により行った。Dexmedetomidineは量依存性にカテコラミンの分泌を抑制し、100μMにて約80%の抑制を示した。またLevomedetomidineも同様カテコラミンの分泌を用量依存性に抑制し、その程度はDexmedetomidineと有意差はなかった。またこれら薬剤よる抑制をatipamezoleおよびL-659,066いずれのアンタゴニストも拮抗しなかった。これらの結果からα2アゴニストによるクロマフィン細胞からのカテコラミンの分泌抑制はα2及びイミダゾール受容体を介する反応とはえ難く、非特異的に細胞に働いてカテコラミンの分泌抑制をしているものと考えられる。これらの結果はクロマフィン細胞での結果であり、これが他の神経細胞でも当てはまるか否かに関して、今後の研究が望まれる。
|