研究概要 |
成熟ウサギを100%酸素下で36時間人工換気を行い酸素中毒肺モデルを作製した。このモデルを使用し合成サーファクタントと局麻薬(リドカイン)の酸素中毒予防効果について検討した。サーファクタントは人工換気開始後12時間目に気道内に120mg/kgを注入した。リドカインは2mg/kgでボーラス投与後、2mg/kg/hrで持続静脈内投与した。検討項目は乾湿重量比(W/D ratio),肺組織(光顕,電顕),気道洗浄液(BALF)中の好中球の全細胞数に占める割合(%PMN),BALF中のアルブミン,プロスタサイクリン(PGI_2),トロンボキサン(TX)A_2,腫瘍壊死因子(TNF),インターロイキン-1(IL-1),活性化補体(C3a,C5a)であった。サーファクタント群,リドカイン群ともW/D ratio,BALF中の%PMN,アルブミン,TNF,IL-1,C3aはコントロール群に比較して有意に低値であった。C5aはリドカイン群でコントロール群に比較して有意に低値であった。PGI_2/TXA_2は有意に高い値を示した。肺組織(光顕)ではコントロール群で観察された炎症細胞浸潤や肺出血,硝子膜形成,肺胞壁の肥厚はサーファクタント群,リドカイン群ともに軽減されていた。肺組織(電顕)ではコントロール群で観察された血管内皮細胞の浮腫、壊死がサーファクタント群,リドカイン群ともに軽減されていた。酸素中毒肺の発症には好中球から産生される活性酸素が重要な役割を果していると考えられる。サーファクタントはSuperoxideの除去作用をもつと報告されており、またリドカインは活性酸素の産生を抑制することが知られている。サーファクタント,リドカインはこれらの機序により酸素中毒肺の発症を予防しているのかもしれない。
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