研究概要 |
α_2作動薬は全身性、硬膜外腔、くも膜下腔に投与したとき鎮痛効果ならびに全身麻酔の作用増強効果を現わし、新しい鎮痛法として臨床応用に期待が掛けられている。そのメカニズムとして脊髄の下降性抑制系の賦活作用による鎮痛作用が想定されている。なかでもクロニジンは実験動物やヒトで硬膜外腔、くも膜下腔に投与したとき鎮痛作用を発揮することが確かめられているが、クロニジンをくも膜下腔に投与したときのSCBFの変化については殆んど報告がない。そこで今回、クロニジンをくも膜下腔に投与したときのSPBFに及ぼす影響を検討した。ウレタン麻酔下の日本白色家兎を定位手術装置を用いて固定し、第8胸椎を中心に3椎間にわたり椎弓を切除し、硬膜を切開して脊髄を露出した。直径80μmの白金電極を微動装置を用いて正中線から1mm外則で3mmの深さまで挿入し、電解式水素クリアランス組織血流計(バイオメディカルサイエンス社 RBA‐2)を用いて脊髄血流量を測定した。脊髄誘発電位は三栄社製シグナルプロセッサー(7T18)を用い、脛骨神経を刺激し、頭蓋骨上から導出、記録した。pH7.10〜7.33調整した等張人工髄液にクロニジンを3段階(0.01,0.1,1.0mg/ml)に溶解し、37℃に加温したうえで露出した脊髄上に0.1ml滴下し、投与後5,15,30分でSCBFを測定した。これら3段階の濃度のいずれにおいてもSCBFは有意の変化を認めず、従来の報告で鎮痛効果を発揮する量のクロニジンをくも膜下腔に投与しても脊髄血流量は減少しないことを明らかにすることが出来た。水素クリアランス法による組織血流量の測定は、電極による組織の破壊が避けられないが、従来報告されている電極直径の1/3以下の電極を作成することにより組織破壊の影響を無視しうる測定を可能にした。
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