当該年度の目的は、ヒトでの脊髄侵害受容反射の測定法とその反応の定量的解析を確立することと視覚尺度による痛みの感覚的次元と情動的次元を評価することである。脊髄侵害受容反射の定量的解析に若干の問題が残っているが、目的はほぼ達成した。ヒトに安全に使用でき、脊髄侵害受容反射を生じるのに適切な電気刺激を発生する可変式の刺激装置を作成した。現有するエボマチックを利用し、脊髄侵害受容反射を記録した。脊髄侵害受容反射の解析プログラムを開発し、コンピュータのハードディスクに内蔵した。刺激装置、エボマチック、コンピュータを接続して一体化し、脊髄侵害受容反射の測定、データ取り込み、データ解析を同時にできるようにした。現有するプリンタに接続し、脊髄侵害受容反射の波形、面積、ヒストグラムを表示できるようにした。現有する安楽椅子に被験者を座らせて筋緊張がない状態で実験した。外果のところで腓腹神経を刺激し、内側の大腿二頭筋短頭の反射的収縮電位を記録した。侵害刺激により脊髄侵害受容反射を導出できが、刺激装置の出力が一定しないため安定した脊髄侵害受容反射が得られないので解決法をさがしているところである。安定した反応が得られたら、星状神経節ブロックや硬膜外脊髄刺激が脊髄侵害受容反射に与える影響をみることにしている。視覚尺度による痛みの感覚的次元と情動的次元を評価するため物差しを作成した。レーザを用いて白色プラスチックに点線を引き、これを物差しとした。点線の左端を痛みなし、あるいは不快なしとみなし、また右端を最高の痛み、あるいは最高の不快とみなすように被験者に説明したあと侵害刺激で誘発される痛み、有痛患者にもともと存在する痛みを評価する。他の実験でこの物差しによる痛みの評価は適切と思われた。
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