研究概要 |
多形核白血球から放出される活性酸素が,肺血管内皮細胞を傷害す事が報告されている.本研究では1)肺血管内皮細胞傷害の原因としての多形核白血球の役割2)肺血管内皮細胞傷害の指標の確立3)肺血管内皮細胞傷害の予防,治療の確立について検討した. 1)肺血管内皮細胞傷害の原因としての多形核白血球の役割:高濃度酸素暴露によって肺血管内皮細胞は障害を受ける。高濃度酸素暴露 (100%酸素又は体外循環中)を受けたヒト多形核白血球の活性酸素産生能について検討した.比較的短時間の高濃度酸素暴露において,多形核白血球の活性酸素産生能に変化は認められなかった.培養ブタ血管内皮細胞をヒト多形核白血球より放出される活性酸素で傷害する実験系では内皮細胞傷害は確認できたものの,内皮細胞よりの逸脱物質はごく微量であったため定量は困難であった.2)肺血管内皮細胞傷害の指標の確立:肺血管内皮細胞よりの逸脱物質(ACE,VWF)を高濃度酸素暴露下のヒトで定量した.比較的短時間の高濃度酸素暴露では,血管内皮細胞よりの逸脱物質の値に大きな変化は認められなかった.血管内皮細胞よりの逸脱物質は,肺血流量によってその値に修飾を受ける事を報告した.ラット呼吸不全モデル(PMA気管内投与,寄生虫感染)では,肺傷害の時期に一致して,肺血管内皮細胞よりの逸脱物質の値が上昇する事を確認した.3)肺血管内皮細胞傷害の予防,治療の確立:ヒト多核白血球,ブタ血管内皮細胞実験系において、各種スカベンジャーによる内皮細胞傷害の抑制について検討した.SODは活性酸素による血管内皮細胞傷害を抑制する事が観察された.以上より肺血管内皮細胞傷害の発生に,多形核白血球より放出される活性酸素が関与する事,又,内皮細胞傷害の指標として,血管内皮細胞よりの逸脱物質がその指標となり得る推察された.
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