研究概要 |
1.絨毛癌6症例について,PCR法を用いたDNA多型解析により,その発生母地となった妊娠を同定することに成功した.絨毛癌DNAは,パラフィン包理ブロック(2例),ヌードマウス移植腫瘍(2例)新鮮手術標本(1例),樹立細胞株(1例)から抽出した.絨毛癌6例中4例が胞状奇胎より発生していたが,1例においては最後の正常妊娠ではなく,それ以前の胞状奇胎から絨毛癌が発生したことが明らかになった.これら胞状奇胎4例のうち1例はヘテロ奇胎であることが確定された.また,正常妊娠と全胞状奇胎の双胎妊娠4例のうち1例は絨毛癌を続発したが,発生母地となった胞状奇胎はヘテロ奇胎であった. 2.反復塩基配例の数の相違(minisatellite・microsatellite)に由来するDNA多型が,情報量・検出の簡便性においてはるかに優れていることを認め,このタイプの多型部分をPCR法により増幅し,各試料間で比較検討した.とくに,反復塩基配例が3塩基以上のmicrosatelliteは,PCR・アクリルアミドゲル電気泳動・銀染色の組み合わせで,容易に多型を検出することができる点,また全染色体対において多数存在する点でとりわけ有用であった. 3.本研究の期間内には,統計学的処理が可能な症例数を収集することができず,ヘテロ奇胎において常時ホモ接合を呈する染色体を同定するまでには至らなかった.これは,絨毛癌発症率の急減,ならびに治療の主体が化学療法となり手術例が限られていることに起因している.したがって,今後は自施設のみならず広く他施設に協力を求め,標本収集に努める必要性がある.
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