研究概要 |
ビタミンDは、Ca代謝・免疫・細胞分化への関与に加え中枢の調節作用も有している。しかし血液脳関門が存在し1α25(OH)_2D_3は脳実質に移行しないので前駆体が脳内に移行して活性物質に転換されねばならないがその報告はない。唯一市川(1990)はウシ脳下垂体に25-OHase,1α-OHase,24-OHaseの存在を見出している。永田(1991)はヒト硬膜下血腫内に胆汁酸の一種(7α-hydroxy-3-oxo-4-cholestenoic acid)を見出し、局所での産生を報告している。本代謝の中心は26-OHaseで本酵素は24-OHaseとしても機能(Anderson,1989)する。それ故これは脳に24 OHaseが存在しビタミンD転換反応系の存在を傍証するものである。この現況下に我々はラット及び家兎の胎仔・新生仔の大脳で、Vit D_3から25(OH)D_3、25(OH)D_3から 1α,25(OH)_2D_3・24,25(OH)_2D_3・ 25,26(OH_2D_3への転換を見出した。しかし局所で作用するならば、Vitamin D Binding proteinが関与しないので、腎臓より数段低い量が転換されると考えねばならない。そこでテオフィリン・dibutylic cAMP・NADPH generating systemを添加することにより、ようやくその転換現象を見出すことができた。新生仔大脳 mitochondria 分画での 1α-,25-OHaseのMichaelis定数(Km:μM)は各々4.35,25.0であった。その他胎盤の分析を行ったところ、ヒトでは、24R-OHase活性(ng/mg.protein/60min.)は、妊娠20週頃(0.89)より出現し、妊娠末期(1.88)まで漸増した。 1α-OHase活性は、中期以降に出現(満期:0.80)した。家兎胎仔・新生仔で25-OHaseを分析したところ、大脳・肝臓・胎盤・肺臓に存在し、肝臓以外は分娩後一過性に上昇して漸減・消失していった。他臓器でも25-OHaseの活性をみるのは、本酵素系に胎児・成人型が存在する可能性も示唆する。現在腎臓でのビタミンD主要代謝経路の分析はほぼ完了に近いが、今後は、これらの代謝経路を腎臓と比較しつつ分析することが必要となる。
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