研究概要 |
近年ヒトパピローマウィルス(HPV)が子宮頸癌組綿中に高頻度に存在することが示され,なかでもHPV16型が広く子宮頸癌に存在し,頸癌発生に強く関与していることが示されている。さらに,HPV16型E_6E_7領域遺伝子が正常細胞の形質転換に不可欠であることも明らかになっている。しかし,HPVの感染経過等HPV感染の自然史は全く不明瞭である。この一要因としてHPV感染同定の有効な方法がないことが挙げられる。そこで,HPV感染の簡便で有効度の高い測定系を開発すべく,HPV感染成立により宿主に生じる反応即ちHPV由来蛋白に対する血清中の抗体価の測定を試みた。まず,HPV16型DNAE_6E_7領域を制限酵素により切り出しこれを発現ベクターに挿入後,このハイブリッドDNAを大腸菌にトランスフェクトし,E_6E_7蛋白とφ10の融合蛋白を産生するクローンを得た。このクローンよりイソプロピルチオガラクトシドで誘導し、φ10との融合蛋白として得,塩析法により精製し,φ10を含む特異的蛋白として抽出した。この融合蛋白を免疫原としてマウスモノクローナル抗体の作製を試みるも特異的に反応するクローンは得られなかった。次に,得られた蛋白も陽性コントロールとしたHPV抗体側定系を開発した。これは,安定で、特異性,再現性に優れ,充分臨床応用しうるものであった。E_6抗体陽性者は正常人で0/38(0%)であったが,子宮頸癌患者では8/30(27%)で,E_7抗体陽性者は正常人で0/38(0%),子宮頸癌患者で10/30(33%)と癌患者に高値を示し,sourthen blot法でHPVを同定出来た患者すべてに抗体の検出が出来た。今回開発したHPV16E_7E_6抗体の患者血清中の抗体価測定系(ELISA法)は臨床応用可能と考えられる。
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