研究概要 |
1.内分泌動態の解析:Androgenの中ではandrostenedione(AS)が卵摘例では閉経例に比して有意(p<0.05)に低値であった。次にestrogenの中ではestrone(E_1)値は卵摘例が閉経例よりも有意(p<0.05)に低値であった。その他のDHEA,testostrone,estradiol,LH,FSHは閉経例と卵摘例でいずれも有意差は存在しなかった。以上より,骨代謝に好結果を及ぼすことが示唆されているASやE_1は閉経例が卵摘例よりも有意に高値であった。2.骨代謝動態の解析:既存の骨代謝マーカーである血清CaおよびP値,骨形成マーカーであるAlpおよびosteocalcin,骨吸収マーカーであるU-Ca/CrおよびU-hydroxyproline/Crは閉経例と卵摘例間でいずれも有意差を認めなかった。またCa調節ホルモンのmid-portion PTH,calcitonin,1,25(OH)_2Dも閉経例と卵摘例において有意差は存在しなかった。その後,新たな骨代謝マーカーとしてintact PTH,尿中pyridinolinesも検討を行ったが,閉経例と卵摘例との間に有意差は認められなかった。以上より内分泌学的には閉経例が卵摘例よりも優位であるにも拘わらず,骨代謝マーカーからはその優位性が反映されなかった。3.骨密度の解析:卵摘の骨密度に対する影響は卵摘後2年ないし3年で終息することが,我々の一連の研究で判明している。そこで,その影響が十分に及んでいると考えられる卵摘後平均約3年の症例を選択し,また閉経例においても閉経後期間をマッチさせて,各種測定法にて測定した各種部位の骨密度の比較を行った。その結果,MD法による第2中手骨,QCT法による第3腰椎全体および海綿骨においても,またDPA法による脊椎骨においても,さらにはDXA法によるL_<2-4>BMDにおいても閉経例と卵摘例には有意差が認められなかった。以上より,両者は臨床的に同一に取り扱ってもよいものと考える。4.In vitroの解析:ヒト臨床例にはheterogeneityがあるので,微妙な差異は個体差の陰に隠れてしまうことは否めない。そこでin vitroによる研究が必要で,preleminaryではあるが,卵摘で骨髄細胞の量的・質的変動を認めたので,さらに検討を加えている。
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