研究概要 |
(基礎的研究)先ず初年度は頭頚部領域の悪性腫瘍25例について,抗癌剤の多剤耐性に関与する膜蛋白質であるP-糖蛋白の発現を免疫組織化学的に検索した。その結果,悪性線維性組織球腫の1症例では,化学療法施行後にP-糖蛋白の発現がみられた。また腺様嚢胞癌では5例中4に,化学療法施行前でもP-糖蛋白の発現がみられ,本腫瘍の自然耐性に関与している可能性があるものと考えられた。以上のことから,頭頚部領域の悪性腫瘍についてもP-糖蛋白の発現が認められる症例があり,化学療法に対する感受性との相関が示唆された。次年度は頭頚部悪性腫瘍における多剤耐性遺伝子mdr1のmRNAレベルでの発現を検索した。方法はスロットブロット法,ノーザンブロット法,in situ hybridization法を用いた。その結果,スロットブロット法,ノーザンブロット法においてmdr1mRNAの発現が認められなかった症例においても,ISH法やRT-PCR法ではその発現を確認することが可能であった。またmdr1mRNAの発現は,その遺伝子産物であるP-糖蛋白の免疫染色上での発現結果と一致しない例もあった。なおcisplatinの薬剤耐性の生化学的な面からの検討も行ったが結論を得るには至らなかった。 (臨床的研究)新たに開発したregimenはcisplatin(CDDP),etoposide(VP-16),mitomycin C(MMC)の3剤を組み合わせた方法である。投与方法は第1日目にCDDP 60mg/m^2を点滴2時間にて投与し,この1時間後にVP-16 40mg/m^2を点滴1時間で,その後,MMC 7mg/m^2をゆっくり静注する。第2,3日目はVP-16 40mg/m^2のみを点滴1時間にて投与する。histologic complete responseを来した1例はVMP療法(VCR+MTX+PEP),CDDP+5-FU療法,CDDP+VP-16療法,さらには放射線治療,拡大手術・再建を行っているにもかかわらず,PEM療法にてhistologic CRを認めたことは大変興味深い。今後は化学療法と照射の同時併用も検討したい。
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