研究概要 |
1.内耳性難聴の病因に深くかかわっていると思われるフリーラジカル,殊に過酸化脂質(phosphatidylcholine及びphosphatidylethanolamine)の蝸牛外リンパ及び血管条に於ける定量を試みた。しかしながら,モルモット肝に於いては定量し得たものの,蝸牛組織では定量し得なかった。サンプル採取の方法をfreezed and dry materialに変える等の改善すべき問題が残された。 2.フリーラジカルの発生・防御に深いかかわりのある金属イオンを定量した。 (1)誘導結合プラズマ発光分析法を用いて,蝸牛鼓室階外リンパ中に,鉄・銅・鉛・亜鉛が存在する事を世画的にも初めて報告した。又、測定し得た9種の陽イオンのうち、亜鉛のみが脳脊髄液中より有意に高濃度を示した。 (2)強大音響負荷(2000Hz,115dBSPL,15分間)によって,蝸牛鼓室階外リンパ中のマグネシウム濃度のみ有意に低下した。これは蝸牛鼓室階外リンパから内リンパへの移行が想定された。 (3)アノキシア3分間の負荷によっても,蝸牛外リンパ中の金属イオン濃度は有意の変化を示さなかったが,アノキシア解除後5分で,鉄のみ急激に有意な濃度上昇を示した。しかしこの鉄濃度上昇は,アノキシア解除後15分にはすでに前値(アノキシア前或いはアノキシア中)に復していた。鉄が過酸化脂質を始めとするフリーラジカルの発生に関与している事を考えると大変興味深い。今後は,何価の鉄イオンが増加したのか,或いは,その鉄上昇の由来等検討していきたい。
|