研究概要 |
形態学的研究(セロイジン、透過電顕、走査電顕)により、以下の手技で安定して耳石斑のみ変性・消失せしめることが可能であることがわかった。膜迷路はdark cell areaを照射しない限り、損傷を明けない。 手技は、アブミ骨を摘出し、卵円窓経由で耳石斑に向って1.0w〜1.5w×0.5秒のアルゴンレーザー(0.4880μm,0.5145μm)を照射する。その後、卵円窓を閉鎖し、伝音連鎖を形成することにより、約2〜4週間で聴力と温度眼振反応の回復がみられた。 アルゴンレーザー照射を受けた耳石、感覚上皮は内リンパ腔に散らばり、3〜5日で局所に遊走してきた細胞により細胞内に消化されることが電顕により判明した。遊走細胞は内リンパのうにも見られるが、内リンパのう内の浮遊細胞には細胞内に明らかな耳石を認めるものはなかった。この浮遊細細も1週以降では内リンパ腔内に見られなくなった。 一方、耳石斑は照射後2週を経過すると、辺縁まで感覚細胞の変性が進み、3か月後には一層の扁平な上皮となり、耳石斑に分布している神経は変性消失が認められた。 これらの経過は前庭破壊術とくらべると、耳石器のみの消失で膜迷路に破綻がなく、聴力、温度眼振反応が保たれていることがわかり、また前庭代償がおこる期間も短いことが確かめられた。 しかし、感覚上皮層でなぜ選択的にアルゴンレーザーが吸収されるか、吸収される波長をもつ色素が存在するのかについては、明らかなことはわからなかった。
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