研究概要 |
音声に対する内耳の電気応答を調べるためには蝸電図でCM,CAPを指標とするが,これらが低出力レーザーの照射により影響を受けることが分かった. 低出力レーザーとは、通常使用される医科手術用レーザーの約百分の一程度(数ミリ〜数十ミリワット)の出力のレーザー光線で,特にHe-Neレーザーによる生体活性化、刺激効果が注目されている.消炎効果、鎮痛効果や血流改善効果等に関する報告も出ている.末梢神経に対する効果を見ると、傷害を受けた神経の再生促進、末梢神経の誘発活動電位の振幅の低下や潜時の延長が報告され,また神経節に対する影響の報告もある.我々はこの低出力レーザーが内耳にも影響をおよぼす可能性があると考え,モルモットの内耳に低出力レーザーを照射して内耳の電気応答を調べた.その結果,レーザーは、CAP(蝸牛神経活動電位)の減少すなわち蝸牛神経の興奮を抑制することが分かった.この反応は、レーザー照射部位に近いほど,また刺激音圧が低いほど明らかであった。また,コルチ器の活動を表すとされる蝸牛マイクロフォン電位(CM)もその振幅が増大する傾向が見られ,蝸牛遠心線維を介してまたは直接内外有毛細胞に対し抑制効果を持つことが示唆された.(平成5年11月の日本耳科学会、平成6年2月のAssociation for Research in Otolaryngologyにて発表)低出力レーザーは,照射を受けた蝸牛の一部のみの神経活動を抑制でき,蝸牛神経の異常興奮が原因の一つと考えられる耳鳴の治療法と成りうることが示唆された.
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