研究概要 |
今年度は鼻咽腔原発の壊死性病変を有する2例の進行性鼻壊疽症例について以下の検索を行った。 1)悪性リンパ腫に対する国際分類(WF)および本邦のLSG分類による病理組織分類:壊死と炎症細胞浸潤が強く認められたが、その中に大型の異型細胞の増殖が見られ、分裂像も認められた。従来のpolymorphic reticulosisに相当する組織像を呈していた。国際分類では、diffuse,large cell,immuno-blastic polymorphic、LSG分類では、diffuse,pleomorphicに分類された。 2)腫瘍細胞の表面形質の検索:リンパ球系細胞に対する各種単クローン抗体(T細胞サブセット、B細胞サブセット、および活性化細胞)と高感度酵素抗体法を用いた免疫組織染色法により、腫瘍細胞の表面形質を検索した。CD2+,cytoplasmic CD3ε+,CD3εδ or εγ-,CD4-,CD8-,CD45R0+,CD56+,であった。B細胞マーカーはいずれも陰性であった。 3)進行性鼻壊疽における免疫遺伝子の再構成の検索:サザーンブロット法による遺伝子再構成の検索により、リンパ球の免疫グロブリンおよびT細胞抗原受容体(TcR)の遺伝子レベルでの解析を行ったところ、T細胞受容体β鎖遺伝子の再構成は認められず、いずれもgerm lineのみであった。 4)Epstein-Barrウイルスとの関連の検討:腫瘍組織中のEBウイルスDNAの存在をin situ hybridization法により検索するとともにEBウイルス遺伝子のTerminal Repeatに対するプローブを用いたサザーンブロット法を施行したところ、2例ともに単クローン性のEBVゲノムが検出された。 以上の成績は、検索した2例の進行性鼻壊疽症例における腫瘍細胞が、平成5年度までに検索した症例と異なり、多くのT細胞マーカーが喪失しており、ナチョラルキラー(NK)細胞抗原(CD56)の発現が認められ、しかもT細胞受容体β鎖遺伝子の再構成は認められないことから、抹消性T細胞性リンパ種よりはNK細胞由来の腫瘍と考えられた。今までの進行性鼻壊疽症例と類似している点は、2例ともに単クローン性のEBVゲノムが検出され、腫瘍発生にEpstein-Barrウイルスが密接に関連していることを示唆した。
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