研究分担者 |
篠 昭男 東京女子医科大学, 医学部, 助手
成田 七美 東京女子医科大学, 医学部, 助手 (00218059)
黒田 令子 東京女子医科大学, 医学部, 助手 (20191463)
高山 幹子 東京女子医科大学, 医学部, 助教授 (80075481)
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研究概要 |
(目的)生体ヒト鼓膜は試料として取り出すことが不可能なため、その力学的特性を調べることは困難である。今回、我々はカセンシング鼓膜切開刀を試作し、臨床例で鼓膜切開時におおる力の測定に成功した。 (対象および方法)力センシング鼓膜切開刀は平行平板構造により押し込み方向の力を検出する力センサー部に切開刀替刀を装着したものである。切開時に切開刀にかかる押し込み方向の力は力センサー部からストレインアンプ,A/Oコンバータ、パソコンと接続されて計測され、カラーディスプレイに経時的な荷重の変化と共に切開の様子が写しだされる。 まず、ヒト以外の生体膜としてモルモットの鼓膜切開を行った(新鮮)例9匹15耳,ホルマリン固定例3匹4耳)。ヒトでは3才〜65才までの滲出性中耳炎23例27耳について切開を行った。 (結果および考察)モルモット鼓膜切開時の力は微小で測定不能であり、今後センサーの感度を上げていく必要がある。ヒト鼓膜な症例によりばらつきが大きく最大で443mN、最小で11mNを示した。これらの鼓膜を視診により菲薄,正常,肥原,高度肥厚の4種類に分類した切開時の力の平均はそれぞれ14.7mN,29.6mN,50.7mN,249.9mNであった。菲薄な鼓膜は正常なものより切開時にかかる力は小さく肥厚した鼓膜ほど大きな力を必要とすると言える。すなわち、この鼓膜切開刀を用いることによりヒト生体鼓膜の菲薄及び肥厚の程度、言いかえれば鼓膜の強度を定量的に表現できる。また、鼓膜切開時に鼓膜以外の硬度の高いもの、岬角・耳小骨などと接触すると計測値が急激に上昇し高値を記録することから、400mNを越える荷重を記録した場合、アラームを設定した。
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