研究概要 |
1.摘出したヒト網膜下増殖組織標本の病理組織学的および免疫組織化学的研究 1)硝子体手術においてヒト網膜下増殖組織の標本を16例集め,エポキシ樹脂に包埋し,光学顕微鏡,電子顕微鏡下に観察した。網膜下増殖組織の病理組織像は症例により様々であり,また同一標本でも部位により異なっていた。およそ(1)血管を含む硬い結合組織,(2)血管を含まない硬い結合組織,(3)多数の細胞を含む索状組織,(4)細胞が進展したフィブリン塊,そして(5)細胞が見られないフィブリン塊の5型に分けられた。細胞は,血管構成細胞以外は網膜色素上皮細胞であった。剥離した感覚網膜と網膜色素上皮の間に蓄積したフィブリンに網膜色素上皮細胞が伸展し,フィブリンは微細な線維やコラーゲンに置換されて硬い細胞外基質を形成すると考えた。これは創傷治癒における肉芽組織の形成に類似の過程と推測する。 2)硝子体手術において得た網膜下増殖組織標本の一部をLR Whiteに包埋し、コラーゲンI,II,III,IV,フィブロネクチン,ラミニンなどの細胞外基質を金コロイドで標識する免疫組織化学電子顕微鏡法で観察した。コラーゲン,フィブロネクチンが増殖した網膜色素上皮細胞で産生されていることを示唆する所見がえられた。 2.家兎眼における網膜下増殖組織の実験モデルの臨床経過と病理組織学的研究 1)家兎眼の網膜下にフィブリノーゲンを,経硝子体的に注入し,実験的網膜下増殖組織の作成を試みているが,まだ満足できるモデルを作るに至っていない。
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