研究概要 |
フィブロネクチン受容体であるインテグリンの発現を促進することにより上皮修復を促進する臨床的な新しい概念の治療法の開発を究極の目的とし、本研究では角膜上皮細胞におけるインテグリン活性の発現を促進する因子を検索した。インターロイキン6(IL-6)について培養した角膜上皮細胞を用いてインテグリン活性の増加および角膜上皮の伸びの促進について検討した。家兎角膜上皮細胞を種々の濃度のIL-6を添加して培養すると、フィブロネクチンマトリックスへの接着細胞数は有意に増加した(対照群:122±5.5,IL-6添加群:221±10.0,細胞数/培養穴)。フィブロネクチンの細胞結合部位のアミノ酸配列を有するペプチドであるGRGDSPや抗インテグリン抗体を添加すると、フィブロネクチンマトリックスへの細胞接着は抑制された。これらの結果よりIL-6によりインテグリン活性が増加することが明らかとなった。家兎角膜片を種々の濃度のIL-6を含む培養液中で培養24時間した後、角膜実質断面を伸長した角膜上皮の長さを測定しIL-6の角膜上皮伸長に対する影響を検討した。角膜上皮の伸びは添加したIL-6の濃度に応じて1ng/mlから10ng/mlの濃度で有意に促進し10ng/mlの濃度ではプラトーに達した。IL-6による上皮伸展促進作用は抗フィブロネクチンおよび抗インテグリン抗体の添加により濃度に依存して阻害された。IL-6のin vivoでの効果を検討すると、対照としたPBS点眼群では1.03±0.15mm^2/hrであったのに対しIL-6点眼群では1.27±0.07(0.1ng/ml点眼群),1.39±0.14(0.3ng/ml点眼群),1.44±0.11(1.0ng/ml点眼群)mm^2/hrと有意に上皮の創傷治癒が促進した。これらの研究結果はIL-6が角膜上皮欠損の治療薬として有効であることを示唆している。
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