研究概要 |
歯周病原性細菌の一つとみなされるPorphyromonas gingivalisに宿主が感作されてから同菌体に対する抗体産生に至る生体内における免疫細胞の動向について明らかにすべく,P.gingivalisの菌体表屑線毛蛋白を,モデル動物としてマウスを用いて,皮下ならびに経口投与した際の血中ならびに唾液中における特異抗体濃度の消長をELISA法により,また各臓器ならびに組織中における特異抗体産生細胞の存否および多寡について,免疫グロブリンクラス別に経日的にELISPOT法により調べた。その結果,BALB/Cマウス皮下投与群の血中における抗線毛免疫グロブリンクラスは,主としてIgGであり,唾液中ではIgGならびにIgAであった。他方,経口投与群では,血中ではIgG,唾液中ではIgAであった。つぎに,各臓器および組織中における特異抗体産生細胞の分布については,皮下投与群では,脾臓,循環血,上腕リンパ節,頚部リンパ節,顎下腺および耳下腺に,抗線毛抗体産生細胞がみられた。特に,脾臓,循環血,上腕リンパ節の免疫グロブリンクラス別の特異抗体産生細胞数の経日的変化は血中の特異抗体濃度のそれと同様のパーンを示した。一方,顎下腺ならびに耳下腺には,特異IgA産生細胞のみが認められた。経口投与群の脾臓,循環血,腸間腺リンパ節,小腸粘膜固有屑,顎下腺および耳下腺に抗線毛抗体産生細胞がみられた。脾臓,循環血では主としてIgG,腸間膜リンパ節ではIgAおよびIgG,小腸粘膜固有屑,顎下腺および耳下腺ではIgAの各クラスの特異抗体産生細胞が認められた。以上の結果から,細菌一その抗原の宿主への侵入経路により,生体の抗体産生にかかわる免疫応答性が異なることが示唆される。さらに,P.gingivalis線毛ならびにその部分合成ペプチドの免疫動物における同菌の感染防御実験について,現在着手し進行中であることを申し添えておきます。
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