研究概要 |
平成5年度において,高橋らの研究組織は長崎大学歯学部附属病院第2保存科を受診したadult periodontitis20例,rapidly progressive periodontitis4例からの歯肉組織を収集し,i)歯肉内の浸潤細胞について各種インターロイキンのモノクローナル抗体による免疫組織化学的検討を行い,さらに,ii)歯周疾患の歯肉を用いて逆転写酵素PCR法によるサイトカインmRNAの検出を試みた。i)免疫組織化学的検索では,まず,厚さ4μmの凍結切片を作成し,ABC法によりインターロイキン1α・1β・2・3・4・5・6の染色を施した。それぞれの染色標本から陽性細胞についての分布や比率を求め,臨床所見とくに歯周ポケットの浅い軽疾例(6mm未満)ではインターロイキン2・3・4の陽性細胞が多く,歯周ポケットの深い重症例(6mm以上)ではインターロイキン1α・1β・2・4・6の陽性細胞が多く認められた。ii)逆転写酵素PCR法によるインターロイキン1α mRNAの発現は軽度の歯周炎では高低さまざまであったが,重症例では,より高い傾向がみられた。インターロイキン1β mRNAの発現は軽度の歯周炎では低いが,重症の歯周炎では有意に上昇していた。インターロイキン1β mRNA/インターロイキン1α mRNAの発現比は重症例において高かった。その他のインターロイキン2・3・4・5・6のmRNA発現は歯周炎歯肉でほとんど検出されなかった。以上の結果から,歯周炎歯肉内で発現しているサイトカインとしてインターロイキン1α・1βがあり,とくに,インターロイキン1βが重要とみなされ,これが歯周炎の発症や遷延化に関与していることが示唆された。
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