骨組織を構成する細胞は、骨芽細胞・骨細胞・破骨細胞とそれらの前駆細胞であり、骨改造現象はこれらの細胞連鎖機構によって行われている。破骨細胞は骨組織吸収の主役をなし、活性化されると酸を分泌し、無機質の溶解を行うと共に、また加水分解酵素を分泌し有機質の消化・分解を行うと考えられている。しかし、骨基質の有機成分の主体をなすコラゲンの消化・分解機構については十分に解明されていない。そこで、改造現象の活発なラット歯槽骨-歯周靭帯境界部組織と、培養骨芽細胞様細胞(MC3T3-E1)を用いて、コラゲン貪食細胞の局在と酵素活性を電顕で組織細胞学・組織細胞化学的に検索した。 歯槽骨表面の破骨細胞に隣接する骨芽細胞・骨芽細胞様細胞にコラゲン貪食像と多数の細胞内コラゲンが観察された。これらの細胞は細胞突起を骨基質に連続するコラゲン細線維に延ばし、活性にコラゲン貪食をしていた。また、破骨細胞が存在する吸収窩周囲の線維芽細胞が露出コラゲン細線維を取り込む像と、細胞内に多数のコラゲン貪食小体が認められた。破骨細胞と隣接しない、形成相と思われる骨芽細胞にもコラゲン貪食像と細胞内コラゲンが観察された。これらのコラゲン貪食水解小体にはACPaseとカテプシンB活性が認められた。更に、培養骨芽細胞様細胞(MC3T3-E1)においても、コラゲン形成がある段階に達すると、コラゲン貪食像とコラゲン貪食小体が観察され、コラゲン貪食能と消化・吸収能を有することが明らかになった。 これらの結果より、骨芽細胞様細胞(骨芽細胞・前駆細胞)は線維芽細胞・セメント芽細胞と同様にコラゲン貪食能を持ち、特異的で局所的に行われるコラゲン貪食とライソゾーム系による細胞内消化・吸収は、骨組織での生理的コラゲン消化・吸収機構に関与していることが示唆された。
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