研究概要 |
本研究は、上皮の角化機構の解明の一環として、脊椎動物の舌粘膜上皮における角化過程と非角化過程、さらには、角化の強弱の生じる過程を超微形態学的に明らかにするとともに、これらの過程で出現する各種のケラチン蛋白のサブユニットとの関わりを免疫組織化学的に明らかにすることである。得られた結果は以下の通りである。 1. 透過電子顕微鏡観察では、水中ないしは水辺に生息する両生類や爬虫類の一部の動物では、舌背粘膜上皮の大部分は、非角化単層円柱ないし立方上皮から成り、細胞内には外分泌性顆粒を含む。一方、爬虫類の一部から鳥類、哺乳類にかけての陸性動物では、舌背粘膜上皮の殆どは重層偏平上皮より成るが、角化の強弱は種間、および同一個体でも部域間で幅が広い。 2. 走査電子顕微鏡観察では、角化傾向が弱い場合には、上皮細胞表面に分布するマイクロリッジは、明瞭で、角化傾向が強い場合には、マイクロリッジの構造は不明瞭である。 3. ラット、マウス、モルモットの舌背粘膜上皮に分布する各種のケラチン蛋白サブユニットの免疫組織化学的観察においては、動物間で若干の差異は認められたものの、比較的近似した結果が得られている。 4. ポリクローナル抗体では、広い範囲の舌背粘膜上皮で、陽性の免疫反応が認められたが、糸状乳頭部では反応性が弱い傾向がみられた。 5. モノクローナル抗体では、ケラチン10,13でほぼ陰性、ケラチン8,18,19では糸状乳頭間上皮の中間層に陽性反応がみられ、ケラチン14では基底層、基底上層に特異的に陽性反応が認められる。 6. ケラトヒアリン顆粒には、いずれの抗体でも陰性である。 なお、電顕レベルでの各種ケラチンの細胞内局在については、現在、研究を継続中である。
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