研究概要 |
無髄のC線維にあることが証明されていて,従来は痛覚の伝達物質と考えられてきたが急性の痛みの伝達物質としては疑問視されてきているsubstance P (SP)の機能的役割を同定する. その方法は:(1)麻酔したラットの脊髄を露出して,非動化後,金属微小電極を刺入した.(2)単一の体性感覚ニューロンの活動電位を記録し,各ニューロンについて顔面・口腔等へ機械,熱,電気刺激を与え,入力一次求心性神経線維を同定した.(3)C線維の入力があると推定されるニューロンから各種刺激に対する反応を記録し,記録部位を含む微小領域を抗体および新しいNK-1 receptor antagonistであるCP-96,345で潅流して反応の経時的変化を追跡した.(4)鉄イオンによる記録位置のマークからニューロンの局在を明らかにした. その結果,(1)脊髄後角侵害受容ニューロンの末梢刺激応答,特にC線維入力によると考えられる長潜時発射,を記録した.(2)33個のニューロンのうち8個(NS;4,WDR;4)は抗血清5-10μl投与後,10-30分ぐらいで末梢電気刺激に対する長潜時発射(110-500ms)が減少し始め,投与後1時間前後で最低に達したが,完全な消失はみられなかった.残りのニューロンは全く変化しないか,逆に暫増するものもあった.(3)一方,CP-96345(20-50nmol)は抗SP血清よりも短時間で長潜時発射を抑制し投与後ACSFによる灌流を早めることで回復開始時間も短縮された.また,完全に長潜時発射が消失するニューロン,全く抑制効果のみられないニューロンもみとめられた.(4)これまでSPが侵害受容ニューロンでの神経伝達/調節に関与することが示唆されてきたが,以上の結果は,一部のニューロンではSPが関与していることを示すものと考えられる.
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