研究概要 |
A-431ヒト類表皮癌細胞を上皮細胞増殖因子(EGF)で刺激すると,細胞増殖促進等の情報伝達系が駆動されることが知られている.われわれはA-431細胞とA-431細胞から作製したEGF高親和性結合部位欠如変異株(An-10細胞)を用いて,EGF高親和性結合部位とrounding形成との関係,およびrounding形成におけるprotein kinase C(PKC)およびprotein kinase A(PKA)の役割について検討した. A-431をEGF(10^<-8>M)で刺激すると,細胞内Ca^<2+>濃度([Ca^<2+>]_1)の上昇と細胞のroundingが生じた.また,PKCの活性化剤である12-0-tetradecanoylphorbol-13-acetate(TPA)(100ng/ml)で30分間前処理すると,EGF高親和性結合部位が消失し,[Ca^<2+>]_1の上昇およびrounding形成が認められなくなった.これらの現象は,PKCがdown reg ulationされると知られているTPA(100ng/ml)の20時間前処理で,何れも回復した.これらの現象は,PKAの活性化剤であるforskolin(100μM)の30分前処理でもTPA(100ng/ml)の20時間前処理とほぼ同じ結果が得られた.一方,EGF高親和性結合部位欠如変異株であるAn-10では,EGF刺激により[Ca^<2+>]_1の上昇は見られたが,roundingは生じなかった.TPA(100ng/ml)の30分間前処理ではA-431細胞の場合と同様の変化が起こった.しかし,TPA(100ng/ml)20時間の前処理ではcontrolでは生じなかった,roundingの形成とEGF高親和性結合部位の発現が認められた.forskolin(100μM)30分間前処理ではTPA(100ng/ml)の20時間処理の場合とほぼ同様の結果が得られた. これらの結果より,A-431細胞におけるrounding形成はPLC系を介したPKCの活性化により阻害され,逆に,PKAの活性化により促進されると推定された.また,roundingの形成と高親和性結合部位の発現は相関すると推定された.
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