ヒト唾液より単離された57残基より成る高プロリン含有唾液ペプチドP-Bの前駆体の有無を明らかにするためにP-BcDNAのクローニングを試みた。まずP-Bのアミノ酸配列に対応する混合オリゴヌクレオチドをプローブとしてヒト顎下腺cDNAライブラリーをスクリーニングしたがポジティブなクローンを得ることが出来なかった。そこで、ヒト顎下腺cDNAをテンプレート、コード鎖側プライマーとしてP-Bアミノ酸配列に対応する混合オリゴヌクレオチド、非コード鎖側プライマーとしてオリゴdTを用いるPCRを行なったところ、P-BcDNAが増巾された。このPCRに於てコード鎖側用に用意したプライマーは機能せず、両鎖ともオリゴdTをプライマーとして伸長した。P-BcDNAは0.8kbpであり、5'非飜訳領域、22残基のアミノ酸配列をコードするシグナル領域、P-B相当アミノ酸配列をコードする領域、終止コドンTAA、B'非飜訳領域、ポリA付加シグナル およびポリTを含む。従って唾液に含まれるP-Bは前駆体が分解されて生じるペプチドではなくて成熟タンパク質であることがわかる。ヒトゲノムDNAの各種制限酵素消化物のサザンハイブリダイゼーションの結果、複数のP-B関連遺伝子が存在する可能性が示唆された。また各種動物ゲノムEcoRI消化物のサザンハイブリダイゼーションの結果、各動物とも複数のバンドを示し、P-B関連遺伝子が広汎な動物に存在することがわかった。ヒト各種組織のノーザンハイブリダイゼーションの結果胎盤に5〜8kbのP-B関連m-RNAが存在することが示された。なおこのcDNAの塩基配列は遺伝研に登録されている。アクセッション番号はD29833である。
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