研究概要 |
本研究では,薄板状の牛歯切片の中央部に貫通又は有底の直径5mmの窩洞を形成し,その窩洞部に化学重合型(CCT)および光重合型(LCT)コンポジットレジンを充填したものを試験片とし,両コンポジットレジンの接着せん断強さおよび接着耐久性を検討した.接着せん断強さ試験は,貫通型の試験片を用い,著者らの開発した打ち抜きせん断試験方法により行った.接着耐久性試験は,有底型の試験片を用い,荷重振幅50Nと100N,繰り返し速度1Hz,繰り返し数10^5回の負荷条件で片振り疲労により行い,そのあと辺縁封鎖性試験により接着耐久性を検討した.得られた結果を要約すると次の通りである. 1.打ち抜きせん断試験 接着せん断強さは,LCTレジンがCCTレジンより高い値を示したが,両レジンとも,TypeIV(エナメル質)で最も大きく,TypeIII(エナメル質/象牙質),TypeI,II(象牙質)の順に減少した.なお,象牙細管の走向角度による影響はわずかであった.TypeIIIの接着せん断強さは,TypeIIに対し,CCTレジンでは21%,LCTレジンでは35%増大するが,TypeIVに対してはCCTレジンでは45%,LCTレジンでは29%減少した.SEM観察によると,象牙質との接着界面にはレジンの重合収縮による局部的な剥離が観察された. 2.接着耐久性試験 窩洞の辺縁封鎖性は,象牙質単体の試験片では,その低下は著しく,エナメル質/象牙質の試験片においても,繰り返し荷重の影響を受け低下した.また,コンポジットレジンと歯質との界面には剥離の発生が観察され,接着界面の疲労による劣化が確認された.
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