研究概要 |
近年,人工骨補填材を使用して歯周組織の再生をはかる方法が研究されてきている。当教室では,生体親和性が高く,周囲歯槽骨からの骨伝導能を有するハイドロキシアパタイトと,生体内での吸収性を有するβ-リン酸三カルシウムとの複合材料である二相性リン酸カルシウム系人工骨補填材(BCP)顆粒を開発し,臨床応用の可能性を追求してきた。平成4年度,5年度にわたり,BCP顆粒をラット頭蓋骨骨欠損内に充填した場合の顆粒の吸収過程および骨への置換程度ならびにサル歯槽骨骨欠損部に充填した場合の歯周組織の治癒,再生への影響について検索してきた。ラット頭蓋骨骨欠損内にBCP顆粒を充填した場合には,術後1週から顆粒表面周囲に多数の多核巨細胞がまた結晶を貪食した多数のマクロファージも観察された。その後,週を追うごとに顆粒の崩壊は進み,多核巨細胞数は減少した。16週では,顆粒内部に層板構造のみられる比較的分化した新生骨組織が観察された。32週では,骨欠損内部の新生骨の量が増し崩壊した顆粒を埋入した新生骨も観察された。サル歯槽骨の一壁性骨欠損にBCP顆粒を充填した場合には,術後3ヶ月では,BCP顆粒はマクロファージに貪食,吸収されその後骨に置換されること,石灰化した新生セメント質がかなりの量で添加されていることなどが観察された。以上より,欠損部の新生骨の形成は,BCP顆粒が一度吸収されてからおこると考えられるために,その立ち上がりは遅れるがその後徐々に安定して骨へ置換されていくことが観察された。また,その崩壊,吸収過程にはマクロファージによる結晶の貪食が大きく関与していることも示された。従って,BCP顆粒は骨親和性および吸収性を有する材料として,歯周組織再生治療への有効な骨補填材であることが示唆されたばかりでなく,近年注目されている骨誘導因子(BMP)の担体としての可能性も有していると思われる。
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